第2章 Sugar2
「お前って、ほんと鈍感。」
「え・・・?」
彼の身体に回されている私の腕を取って、彼が振り向いた。
私の顔を見て、困ったように、眉を下げる。
そっと、暖かい彼の手がほっぺに触れた。
「俺だって、泣きたいんだけど。」
困った顔が、辛そうな顔に変わった。
「俺、なんでかお前にだけ、優しく出来ないんだよ・・・。だから、優しくして欲しいんなら、麻璃央くんといた方がいいよ?」
辛そうな声で言わないで。
俺を選べ。麻璃央くんのとこなんか行くな。
そんな風に聞こえるから・・・。
「私、麻璃央さんのこと、流司さんのように好きになれない。キスしたいって思うのも、抱き合いたいって思うのも、流司さんだけだから・・・」
私がそう言うと、彼は私の手を引っ張って、椅子に座り、私を自分の目の前に立たせた。
そのまま私を抱きしめて、お腹に顔を埋めた。
「なんでそんなに、俺のこと好きなの?俺、そんないい奴じゃないよ?すげー束縛するし、嫉妬するし、そのくせ、甘えるの得意じゃないから、お前が見たい俺なんて出来ない。」
そう言って、私の背中の方の服をぎゅっと握る。
充分、甘えてくれてるじゃない。
こんな彼を見るのは、初めてで・・・嬉しくて・・・。
そこにある彼の髪の隙間に、指を通した。
「心羽、麻璃央くんのとこになんか行かないで・・・。ずっと俺といて・・・。好きだよ・・・」
「私はずっと、流司さんの隣にいるよ。」
初めて、はっきりと彼の気持ちを聞けた。
私も好き、大好き、愛してる。誰よりも。
彼の鼻を啜る音が聞こえて、泣いてるんだって思った。
彼が泣いてるのが、誰にもバレないように、お腹のところにある頭を両腕で優しく包み込んだ。
「心羽、好き。俺のこと、ずっと好きでいて。嫌いにならないで・・・」
「もちろん。ずっと好きだよ。嫌いになるはずなんて、ない。」
どんな貴方も、愛おしい。
ぶっきらぼうな貴方も。
意地悪な貴方も。
ヤキモチ妬きな貴方も。
優しい貴方も。
こんなにも弱々しい貴方も。
これからもずーっと、傍にいるから・・・。
「やーっと、素直になった?やな役回りになってやった俺に感謝しろよ。」
麻璃央さんがそう言って、流司さんの背中をぽんっとして、離れていった。