第12章 Sugar12
「そんな可愛くおねだりするなんて、ずるい。」
少しだけ、彼の鼓動が速くなる。
目を閉じて待っていると、一瞬だけ唇が触れて離れた。
「俺らキスしすぎでしょ。」
「いいじゃん、それ以上のことは出来ないんだし。」
おでこにキスをしながら喋るから、ちょっと擽ったい。
「こんなとこ、皆には見せられないね。」
「なんか、積極的な心羽って、誰にも見せたくない。」
なんかその言い方、えっちなんだけど。
別に、キスとかはえっちじゃないのに。
「流司さんが私を、そうさせなければいいんだよ。」
「どんな俺だと、そうなる?」
「どんなでも・・・。」
「ダメじゃん。」
さっきも似たような会話した気がする。
ま、いっか、そんなの。
流司さんの声、聞けるから。
「ねぇ流司さん。流司さんえっちしない代わりに、好きっていっぱい言ってくれるって言ってたけど、ムリしなくていいからね。」
「なんで?」
「だって流司さん、そういうの苦手でしょ?」
ムリまでして、言って欲しくない。
傍にいれるだけで幸せだから、いつもの流司さんでいて・・・?
「お前はそれでいいの?」
「うん。流司さんの気分でいいから。キスとかも・・・。私がお願いしても、したくなかったらしなくていいんだよ?」
そういう気分の時だってあるでしょ?
私、どんな流司さんでも好きだから。
私のことを好きじゃない流司さんでも、好きだから。
「じゃあ、今は・・・こうしたい。」
大事なものを扱うかのように、私の身体を抱き竦めた。
いつもよりも、少しだけ速い彼の鼓動が、心地いい。
私、この流司さんの抱き締め方好き。
抱き締められたまま、ふたりはなにも喋らずに、くっ付いていた。
付き合いたての頃なんて、こんなこと出来るようになるなんて、想像してなかった。
彼に愛されるなんて、想像してなかった。
愛されたかったけど、彼に愛される私を想像出来なかった。
頑張ってよかったって、思う。
頑張ったから、今私は、彼に愛される喜びを知ることが出来た。
流司さんの腕の中が温かくて・・・気持ちよくて、そのまま私は眠ってしまった。