第12章 Sugar12
「心羽、帰るよ。」
「え・・・?」
これ以上、彼女を他の男に見せたくない。
仕事でもないのに・・・。
「そんなに俺以外の男に、可愛いって言われたの、嬉しいわけ?」
「あ・・・いや、ちが・・・。」
こんな独占欲丸出しじゃ、彼女に嫌われるかな・・・?
「違うくないよね?俺、先帰る。」
なんで彼女相手だと、すぐに拗ねちゃうんだろ。
普通にしてたいのに・・・優しくしたいのに・・・。
「ちょ、流司?」
「流司さん・・・。」
俺の手を握って、少し潤んだ目で見つめてくる。
俺、また泣かせる?
「ごめん、ウソだよ。」
彼女の涙には適わなくて・・・また俺は、彼女が見たい俺になる。
優しく微笑んで、頭を撫でた。
「いじわる・・・昨日だってっ・・・。」
「それはもう、謝っただろ?」
むぅとした顔になる彼女は、可愛過ぎて・・・誰にも見せたくない。
「ほら、またそうやって・・・。」
「ひたひ・・・。」
「なんて?」
可愛い顔を誰にも見せないように、両頬を摘んで引っ張った。
「ここは二人だけの世界じゃないからねー。」
「みちゅっ!・・・あ、すみません!三津谷さん、ありがとうございます!」
俺らを離すため、彼女の頬を摘んだ手を引き剥がす、亮くん。
「お前、みちゅって・・・。」
「D2好きだったから・・・。」
全然知らなかったんだけど。
「お前って、面食いだよな。」
「そりゃあね。流司さんがタイプだからね。」
もうダメだ・・・。
こいつとは、こういう話しない方がいい。
俺が殺される。
萌死ぬって、こういうことなの?
「さっ、帰ろ?心羽。もう挨拶したし、いいでしょ?」
気に食わない顔でゆっくり頷いたんだけど。
そんなに俺とふたりっきりになるの、嫌なの?
「そんな・・・。」
「だって・・・ふたりっきりになったら、したくなっちゃうよ・・・。」
俺の言葉を遮って、耳元でそう囁いた彼女は、顔を真っ赤にさせて俯いた。
だから・・・ほんとにもうダメ・・・。
こいつのせいで、語彙力が・・・。
「俺もなの、知ってるでしょ?でも、お前と二人でいたい・・・。」
俺をそうさせる彼女が憎たらしい程、愛しい。