第12章 Sugar12
「佐藤流司さん、鈴木さんという方がいらしてますけど、通しても大丈夫でしょうか?」
スタッフの人がそう聞いてきたから、お願いします!と返した。
「皆ー!流司の彼女・・・じゃなくて、婚約者がくるよー!」
「えーてんくん、やめて・・・。」
てかなんで、あいつも連絡しないんだよ。
入ってくる必要ないじゃん・・・こんな男ばっかのとこに。
この部屋、男しかいないんだから・・・。
コンコンとノックが聞こえて、少しだけ扉を開けて、こちらが見えないように話しかけてくる。
「失礼します・・・入っても大丈夫でしょうか・・・?」
いつもよりも少し、よそよそしい彼女の声。
「心羽、大丈夫だよ、今、着替えてる人いないから。」
彼女がここに来るまでに皆、着替えてくれていた。
ドアノブに手をかけ、優しく引くと、そこに彼女が立っていた。
「流司さん・・・ごめんね、急に来て・・・。」
「ほんとだよ。外で待っててくれたらいいのに。」
「皆さんに、挨拶したくて・・・。」
おいで、と言って、彼女の腕を引いて中に入れる。
心羽は皆と向き合うと、少し恥ずかしながら、喋り始める。
「はじめまして、鈴木心羽です。メイクのお仕事をしています。よろしくお願いします。」
「よろしく!やばっ、めっちゃ可愛いじゃん、流司!」
うるさい。
こいつのこと、可愛いって言っていいのは、俺だけ。
「ありがとうございます。」
恥ずかしそうに微笑む彼女。
やめろ・・・そんな顔、見せんな。
「どうしたの、流司さん?」
「お前が可愛いって、一番知ってんのは俺・・・。」
一気に彼女の顔は赤くなり、俺の肩に顔を隠すように蹲った。
ほら、俺の言葉で一番可愛い反応をする。
こいつは俺の前で、一番可愛くなんだよ。
「いちゃつき禁止!」
「そんないちゃつかねぇよ。今、そういうこと出来ないから。」
「俺たちがいるとこじゃ、出来ないからな。」
そういう問題じゃない。
いつもだったら、皆がいてもいちゃついてる。
「ちげーよ。今はしないって、決めてるから。」
早く公表したい。