第12章 Sugar12
「あ、流司。流司って彼女いるんでしょ?」
「えーてんくん、なに急に・・・。」
隣でメイクをしている佐藤永典に話しかけられた。
てか、なんでその話題。
「結構、広まってるよ?」
「まじか・・・でも、彼女じゃないよ?」
そんな広まってんの?
ファンにはバレてないよな?
デートなんてしないし、彼女のことをSNSに載せたことなんてない。
一緒に帰ってる時、バレてるっていう可能性はあるけど。
ファンには、自分の口から言いたい。
「え、どうゆうこと?付き合ってる訳じゃないの?」
「今は、婚約者。もう少しで公表しようと思ってる。」
「え、流司、結婚すんの?」
そう、と短く返して、その会話は終わった。
「どんな子?」
と思ったのに・・・。
「えーてんくん、会ったことないっけ?」
「ないと思うけど・・・。」
「鈴木心羽ってメイクさん。」
彼女の名前を呟きながら、考えるえーてんくん。
「あっ!名前聞いたことある!なんかめっちゃ上手い人って聞いた。でも、会ったことない。」
彼女は、メイクが上手いって有名だからね。
俺たちの業界ではね。
あいつ、名前とか顔、公開したがらないからね。
DVDのエンドロールに流れるやつ、名無しのメイク、だからね。
どんだけ、センスないんだよって。
名前考えるのも面倒くさいって言って、それだからね。
公表する時、顔も名前も出すって言ってた。
俺のファンに、全部知って欲しいんだって。
なにも隠したくないからって。
俺の女って、ほんと強いやつだと思う。
「今日、迎えに来るって言ってたなぁ。」
「まじで?紹介してよ!」
「あいつがいいって言ったらね。」
流司の彼女だから絶対可愛いんだろうなぁ、とか言って、俺の話を聞いてない。
最高に可愛いから、惚れないでよ?
話は終わり、お互い役に入るため、精神統一を始める。
しばらくすると、幕が上がり、久我信士としてステージに立つ。
舞台が終わると、すぐに着替えて帰る準備をする。
「流司、はや。」
皆がなんか言ってるけど、無視だ。
心羽が迎えに来てくれるんだから、急がずにはいられないでしょ。