第11章 Sugar11
ダメだ・・・彼が近過ぎて、顔が熱い。
「流司くん、心羽ちゃんに袖水かけちゃったんだって?」
「は?袖水?」
パーカーの胸元を少しパタパタさせて、これっと伝える。
「バカ、見えてる。」
小声でそんなことを言われて、また顔が熱くなった。
てか、耳まで熱い。
「あぁ、パーカー?違うよ?」
え、なに言ってんの。
私の努力と勇気をどうしてくれんの。
「こいつのせいで、白いのかかっちゃったからだよ。」
それを聞いた瞬間、身体が勝手に動いた。
「んんっ!!ううふい!」
「ふふっ、なんて言ってるか、わかんないなー。」
首に腕を回して、そのまま小脇に抱えた。
「え、心羽ちゃんが怖い・・・。」
てか、なんで普通に言ってんの?
頭おかしいんじゃない?
バカでしょ。
「白いのって・・・流司、思いっ切りセクハラ。変態、キモ。」
そうだよ、優衣さんもいるんだよ、なに言ってんの。
優衣さんが彼を、めっちゃ軽蔑した目で見てる。
「んんーっ!」
私の腕を叩いてくる流司さん。
「流司、息、出来てないんじゃね?」
あ、めっちゃ強く締めてるもんね。
ちょっと力を抜いた。
楽になったのか、少し大人しくなったと思ったら、なんか噛まれた。
そこ胸だから。
待って、わかっててやってる、これ。
なんか甘噛みでずっとはむはむしてる。
みんなに見えないことをいいことに、なにしてんじゃゴラァ!!
「ごめんね、苦しいよね。今、離したげるよ。」
「うわぁっ!!」
「2人っきりの時以外、半径1メートル以上近付かないで!」
彼を広大くんの方に投げ飛ばして、そう言い放った。
みんながいる前で、変なことされたら堪らない。
「広大、心羽がぁ・・・。酷くない?酷過ぎない?彼氏に近付くなって・・・てか、婚約者だよ?」
「流司くん、なんかしたの?」
私の乱れてるとこ誰にも見られたくないとか言いながら、こんなことはするんだ?
酷いのは、どっちよ。
「胸、噛んだだけ。」
「そりゃ、怒られるよ・・・。」
広大くんは苦笑いしながら、彼に答えた。
広大くんは、私の味方だ。
「さっきまで、あんなことしてたのに・・・。」
まだ言う彼を睨んだ。