第11章 Sugar11
「なぁ良恵、俺なんかした?なんでそんな怒ってんの?」
「・・・。」
帰ってきてすぐそう言われて、そのことにもイラついて・・・なんでわからないの・・・?
でも聞かなきゃ・・・さっきのこと。
流司さん拗ねてたはずなのに、私が怒ってるのに気付いて、すぐに心配してくれた。
怒ってるはずなのに、そんな彼が愛おしい。
「公表するって、私聞いてない。結婚のことだって・・・。」
「公表のことは言ってなかったけど、結婚のことはそれとなく伝えたつもりだけど?」
先にどっちから聞けばいいんだろう。
結婚の方?
結婚が決まってないと、公表はしないはずだから。
「いつとか言ってないじゃん。それに、ほんとかどうかなんて、あんなのわかるはずないよ。」
「あれでも俺、すげぇ頑張ったんだけど・・・。」
ごめん、こんなこと言いたいんじゃなくて・・・ちゃんと言って欲しいだけなの・・・。
「私、して欲しいことあるって言ったの覚えてる?」
「昨日の?」
頷いて肯定した。
「もう、なんだかわかるよね?」
プロポーズしてなんて言いたくないから。
彼はわかってくれる。
彼はいつも気付いてくれる。
「雰囲気もくそもないじゃん・・・。」
「雰囲気とか、そんなのいらないから・・・。」
彼の袖を両手でぎゅっと握って、お願いと呟いた。
彼からなら、雰囲気とかそんなのなくても、最高の思い出になるから。
プロポーズなんて、お願いするもんじゃないよね。
でも、私がきっかけを作らなきゃ、流司さんは言えないでしょ?
「花村良恵、俺と結婚しろ。」
なんで、上から目線?
なんで、命令?
「ごめん・・・俺と結婚して?お願い・・・。俺、良恵じゃなきゃ、やだ・・・。お前以外のやつ、好きになるなんて、もうムリ・・・。」
なんでそんな不安そうなの。
答えなんてわかりきってるでしょ。
私が答える前に、彼は鞄を漁り始めた。
ちょっと、なにしてんの?
今、すんごい大事なとこなんだけど。
「花村良恵、俺にお前の残りの人生を下さい。」
彼が差し出した手の中には、小さな箱に収まった光り輝くリングがあった。