第9章 Sugar9
とてつもなく、つまらない。
ナルステの稽古の真っ最中。
黒ステは中々メイクさんが決まらず、私が行っていたけど、元々決まるまでだったので、ナルステに戻って来た。
決まらなかったら、ナルステ出来なかったけど・・・。
先にオファーがきてたのが、黒ステだったからね。
せっかく流司さんと一緒なのに、つまらない。
こんなつまらなく感じる稽古、初めて・・・。
サクラ役の伊藤優衣さんとばっか話して、休憩中ですら、私に構ってくれない。
貴方はいったい誰の彼氏なんだい?・・・流司さん。
この前、彼があんな嘘付いたから、どうしても心が晴れない。
嘘でも、気になる人を優衣さんに選んだってことは、彼女は、そういう対象なんでしょ?
嫌いじゃないんでしょ?
好きなの?
もうやだ・・・どうして、こんなことしか考えられないの?
お願いだから、彼女から離れて・・・。
「心羽ちゃん?」
「広大さん・・・。」
「広大でいいって、言ってんじゃん。」
ナルト役の松岡広大さんだ。
ひとりで2人を眺めていると、その世界を遮るように、私の前に立って顔を覗き込んでくる。
「じゃあ、広大くん・・・?」
「よしっ、我慢する。」
我慢するって・・・めっちゃ進歩したよね?
「同い年なんだから、敬語もなしね?」
「はい。」
「だから・・・それ敬語!」
「あ・・・。」
思わずはいと答えてしまった私を見て、あはははっと可愛く笑う彼。
きっと、私の彼氏は、広大くんみたいな人の方が上手くいくんだ。
優しくて、可愛くて、明るくて、同い年で、私が落ち込んでる時にさりげなく、助けてくれる、そんな人が・・・。
位置を変えることなく、私の前に座って、話し相手になってくれてる。
私があの2人を見なくていいように・・・考えなくていいように。
「心羽ちゃんはさ、流司くんじゃなくて、俺を見ればいいと思うよ・・・。」
「え?」
「いやっ、ナルト!ナルト好きでしょ?」
広大くんのことかと、思った・・・。
めっちゃびっくりしたよ・・・。
ナルトなら、流司さんのこともサスケって言えばいいのに。