第8章 Sugar8
「いつも俺、可愛くないとか言うけどさ、その意味わかってるよね?」
「意味?」
口下手で思ってることを素直に口に出せない俺だよ?
わかるでしょ?
あんまり、恥ずいこと言わせんなよ。
だから、俺が可愛くないって言った時は、
「その反対だよ。」
そう思って。
「可愛いってこと・・・?」
「言わせんな、バカ。」
目見てなんて言えるか、アホ。
「言って欲しいな?」
「今、お前可愛くないからムリ。」
「ん?えっと、それは・・・?」
いつだってお前は、可愛い。
好きな女のことを可愛くないとか思う奴なんて、いんの?
それ以前に心羽は、誰がどう見ても、可愛い。
なんでそんな顔に生まれたの?
可愛過ぎて、俺の心が持たない。
男はすぐ寄ってくるし、その顔で煽ってくるし・・・いや、煽ってくる時はもっとやばい・・・。
ほんと、自覚してよ。
「お前は可愛いよ。」
「聞こえないよ!もう1回!ちゃんと言って!」
うっさいなぁ。
俺がどんな性格かわかってるくせに、酷くない?
めっちゃ声ちっさかったけど、絶対聞こえたでしょ。
こんな近いし・・・。
横を向けば、鼻が付きそうな程近くに、心羽がいる。
「聞こえたのわかってるから。俺がもっかい言うと思う?」
「言ってよ・・・何回でも聞きたい。流司さんだから・・・そんな甘い言葉が、もっと欲しい・・・。」
ほんとお前は、欲張りだよな。
俺もだけど。
心羽の全部、独り占めしたい。
「好き・・・。」
そう言って俺は、彼女の唇に自分のそれを柔らかくくっ付けた。
触れたのは、たった一瞬だけ。
それだけでも、幸福感が増す。
お前がいると、毎日が幸せ。
でも、そんなこと言えない。
言えたら、こいつはきっと、花が咲いたように最高に可愛い顔で笑うんだろうな・・・。
今は、これで勘弁して。
好き以上の言葉は、恥ずかし過ぎる。
可愛いとか、好きとかだけでも、恥ずかし過ぎて死ねる。
「私も好きだよ。」
彼女の周りに桜が舞った。
綺麗だ・・・。
俺の好きという言葉だけで、最高に綺麗な笑顔を見せてくれる。
心羽にこんな顔をさせられるのは、俺だけでありたい。