第8章 Sugar8
稽古の帰り道、私はずっと麻璃央さんのことを考えていた。
心が、痛い。
痛いのは、麻璃央さんのはずなのに・・・どうしてこんなに、苦しいんだろう。
「ごめんなさい・・・うっ・・・。」
涙が出てくる。
別に、麻璃央さんのことを好きなわけじゃない。
流司さんが好きだ。
なのに、どうしてこんなに苦しいの・・・?
私はあの後、麻璃央さんに泣きながら謝り続けて、彼を困らせてしまった。
このことは、流司さんに報告するべき?
付き合ってるんだから、言わなきゃダメだよね。
告白されたんだから。
それに、流司さんは麻璃央さんの気持ちを知ってるみたいだし。
家に着き、玄関に入ると、彼の靴がある。
もう、帰って来てたんだ。
まだ、気持ちの整理がつかない。
なにをどう話したらいいか、わかんない。
取り敢えずリビングに入り、
「ただいま。」
と、言う。
なにから言えばいいの・・・?
「流司さん。」
「ん?」
名前だけ呼んで、その後はなにを言えばいいかわからず、黙る。
「心羽、取り敢えずこっちおいで。」
名前を呼んどいて黙る私に怒りもせず、優しい彼でソファーをポンポンする。
もしかして、なにか聞いてる?
恐る恐る彼の隣に座り、下を向く。
「整理、出来てからでいいから。お前が話すまで、ちゃんと待つから。」
そう言って、私の膝に頭を乗せる。
乗せたと思ったら手を私の太腿の隣に付き、もう片方の手を私の後頭部に回す。
「心羽。」
「流司さん・・・んっ。」
目の前で名前を呼ばれたと思ったら、触れるだけのキスをされる。
そのままおでこを私の肩に置き、後頭部に回した手を、私の手に重ねた。
早く聞きたくて仕様がないんだと思う。
でも、ちゃんと待っててくれる。
このまま彼に甘えて、話したくない。
でも、それじゃダメだ。
言わなくちゃ。
「流司さん、私、麻璃央さんに好きって言われた。」
「そっか、知ってる。」
「え?」
案外あっさりしてて、びっくりした。
てか、やっぱり知ってたんだ。
「麻璃央くんから聞いた。」
知ってて、私が話すまで待っててくれたんだ。
全部ちゃんと言わなきゃ。
私の答えも、気持ちも。