第8章 Sugar8
彼に握られてない方の手で、彼の服をぎゅっと握った。
「私、断ったよっ・・・ちゃんと断ったよ!流司さんが好きって・・・。」
「ん、泣いて謝られたって、麻璃央くん後悔してたよ。泣かせるくらいなら、言わなきゃよかったって・・・心羽のこと忘れてから、好きだったよって笑って言えばよかったって・・・。」
やっぱり麻璃央さんは、どこまでも優しい。
からかってきたりするけど、彼は・・・麻璃央さんは、結局優しいんだ。
「私、苦しいのっ・・・!麻璃央さんに好きだって言われて・・・その気持ちに応えられなくてっ・・・。」
「ほらやっぱり、麻璃央くんのこと好きになっとけばよかったでしょ?そしたら、苦しまなくて済んだじゃん。」
やだ、そんなこと言わないで・・・。
流司さんを選んだこと、後悔してないんだから・・・。
「それとさ、俺も話がある。」
少し私から離れて、真っ直ぐに見つめてくる。
こんな時に、そんな真剣な顔しないで・・・。
これから言われることが、怖くてたまらない。
「気になるやつが出来た。」
「え・・・?」
「まだ好きかどうかはわかんないんだけど、好きになっちゃうかもしんない・・・。」
それって、私とは終わりってこと・・・?
そんなの、やだよ・・・。
離さないでよ・・・。
「共演者?」
「うん。お前も知ってる。会ったことはないと思うけど。」
女優さんなら、勝ち目なんてない。
こんな平凡な私と可愛くて綺麗な人なんて・・・。
「俺と同い年の人。」
NARUTOの共演者で同い年・・・あの人しかいない。
わかってた。
彼が彼女を好きになる日が来ることを。
まだ、気になるっていう段階だけど、きっと好きになる。
しがみつくように、おでこを彼の胸に寄せる。
「好きにならないで・・・。」
そんなこと言ったって、意味ないことはわかってる。
私だけを見ていて欲しい・・・。
ちゃんと想いを伝えて、彼の心がどこにも行かないようにしなきゃ・・・。
突然言われて、なにがなんだかわからないうちに、彼が離れて行かないように。
「流司さん好き・・・好きだよ・・・。」
彼は、どんな愛され方が好きなんだろう?
私なりに想いを行動に移していく。