bond of violet【文豪ストレイドッグス】
第1章 between the two colors
その瞳は、青かった。
大きなベッドで目を覚ました少女は、ただ天井を眺めた。
それから暫くして、身体を反り、伸ばしてみた。天井は、どこまで行っても白く、彼女の宝石のように美しい瞳には未だ、白以外映らなかった。
「起きたかい?」
何処かから声がする。彼女はその声がする方を見るため、ゆっくりと身体を起こす。
彼女にはそれが誰だか、分かるような気がした。遠い記憶の中、その姿が大きく影響していたことだけは分かった。
「…ぁ」
口を開くも、掠れた音しか零れてこない。
彼女には、声の出し方が分からなかった。
「君は、知っているかい?君が生まれた意味を。」
「……。」
分からない、と言うように彼女は首を傾げた。彼女が首を傾げると、同じように彼女の綺麗な白金の髪もサラリと揺れる。
「そりゃあ、分かっていてもらっちゃあ、困るんだもの。」
男は立ち上がり、彼女の前まで来ると、大きな手で彼女の頬を包み込んだ。
「君は必ず、幸せになりなさい。」
男は、愛おしいような、寂しいような、そんな声で呟く。
その言葉の意味が分からない彼女は、ただ男の目をじっと見つめた。そして、男の瞳が少し、赤くなっているのを見つけたのだった。