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キヲク巡る

第1章 。。。


全てを思い出し
本丸の現状を一つ一つ見回していく。



厨に行くと
野菜が腐り虫がたかっている
思わず口元に袖を当てる
皿には腐った稲荷寿司がラップをされたまま
齧ってあるのは鳴狐か小狐丸の
つまみ食いだろう。

畑にいくと
萎れたまま収穫されていない野菜
札には慣れない字で
「だいこん」
と書かれていた
たぶん今剣が岩融に教えて貰って
書いた字であろう。

馬小屋へいくと
息の絶えた馬たち
小屋の脇には三日月の髪飾り
馬に頭をかじられた時に外れたんだろう。

お風呂場へいくと
重苦しい空気に錆びた臭い
短刀達と一緒に掃除をして
泡まみれで遊びまくり
燭台切と歌仙に怒られたこと。
一人一人の身長を柱に刻んだ事。

縁側に、大広間に。
この本丸全てに数え切れない程の思い出が溢れている
私は記憶を封じていた
こんなに幸せな記憶まで封じていた

私が覚えてなきゃいけないのに。

涙を拭い
私は最後の場所へと足を向けることにした。
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