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砂漠の月

第1章 砂漠の月00~70


ぱっと両手を離した三人を置いて、市は脱衣所に駆けこんでいき残された三人はやり過ぎたかと顔を見合わせるが卑猥な行為はしていないはずで、ひとまず置いていかれた市の荷物も手にして三人も露天風呂を出ることにした。
脱衣所に行くと隅の方で襦袢を引掛けたまま膝を抱えてクスン、クスンと拗ねていた。

「市、すまない。調子に乗ってしまった」
「すみません、市先輩……」
「市姉ちゃん、ごめんだよ」

三人で市の傍に行き謝ると、三人は悪くないからと言う市にそれでも拗ねている様子を見てとって首を傾げる。
そして思い至ったのは元就の言い分で、三人は顔を見合わせると苦笑を浮かべてしまう。
どうにか宥め、着替えを促し月子も浴衣を着つけて四人で外に出ると、既に上がっていた男性陣が待っていた。元就が近づいてくると市は解りやすく頬を膨らまして拗ね、そっぽを向いた。
珍しく子供っぽいその仕草に月子は可愛いと思うが、口には出さず困ったように見ているしか出来ない。
かすがもいつきも間に入る気はないようでいつきは政宗と小十郎に呼ばれてアイスを食べに行くし、かすがも売店を見て来ると行ってしまう。
月子も傍に居たら当てられそうだと思い、傍を離れようとすると晴久が手招いているのが見えてそちらに行く。

「飲むか?」
「あ、はい。ありがとうございます」

傍に着くと冷たいポカリが差し出され、開封済みだったそれを飲みながら市と元就を眺める。

「市先輩、可愛いですね……」
「ん? なんだ、急に。月子も可愛いだろ?」
「っ?! けほっ、けほっ」

拗ねたり照れたり、可愛らしい反応を見せている市を眺めてなんとなく零した言葉に隣に居た晴久が不思議そうに首を傾げながらさも当たり前のように言った。
不意打ちのそれに飲んでいたポカリを気管に吸い込んでしまった月子が咽て、晴久が慌ててポカリのペットボトルを取り上げその背を擦る。
その四人を遠目に眺め、やれやれと首を振っていたのが一人ではないことは、既に当たり前の光景となりつつあった。
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