• テキストサイズ

砂漠の月

第1章 砂漠の月00~70


45

コンコン

夜、寝る前に控えめにノックされた女子部屋の扉に、市とかすがは何だと視線を向けた。
市が動くよりも先にかすがが反応し、何だ。と声を掛けながら開けると

「尼子か」
「市、上杉、寝る前に悪い」
「月子に用事か?」
「そうなんだが寝てるだろ、ひとつ頼まれてくれねえかな」

何だ?と市とかすがは顔を見合わせ首を傾げた。

真夜中に差し掛かる頃、市は時間を確認して月子に声を掛ける

「月子ちゃん、月子ちゃん」
「ふぁ...いちせんぱい?」

優しく起こされた月子は、いつの間に寝ちゃったんだろうと首を動かし寝ぼけた頭で時計を見ると
もう0時?何で起こされたのか、声を掛けた市を見ると優しい笑顔に少しドキリとした

「起きた?」
「はい、どうしたんですか?」
「起こしてごめんね、月子ちゃんに用があるって言われたの」
「ふえ」

自分に用事?誰だろう?と首を傾げてると。部屋の扉がコンコンと音を立てて開く

「月子起きたか?」
「晴久先輩?」
「起きたよ。晴久お願いね」
「おう」

着流しに身を包んだ晴久は月子の手を取り

「ちょっと行ってくる」

見せたいものがあるんだ。そう月子に告げて手を繋いで外に向かった。

「彼奴は無自覚か?」
「自覚してたら多分まだぎこちないと思うの」
「アホだ」
「まあまあ、ほらかすが。満点の星空」
「懐かしいな」




戦国の時代程じゃないが、俺達の知る空を、月子にも見せたかったんだ。

「綺麗…」
「昨日と一昨日は雲が掛かってたからな、今日は雲が無くて良かった」
「こんなに星が綺麗な空は見た事無いです」

空に輝く宝石みたいですね、と喜ぶ月子の頭を撫でて
晴久は恥ずかしそうに笑って。

「ありがとな」
「?」

何にお礼を言われたのか見当もつかず首を傾げる月子に、晴久は笑って。
気付かれない様に軽く、婆娑羅で風を起こして。蒸し暑い夏の空気を穏やかにさせた。
/ 338ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp