第1章 砂漠の月00~70
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行き先が山と決まってからの行動は速かった。
散々言い争っていた元親も、山で決まってからは何で遊ぶか真剣に吟味していたしコテージの手配なども月子が気付いた時には終わっていた。
そして迎えた当日は、雹牙の運転で海の時同様に参加メンバーを拾っていく道中となり、誰かが乗ってくる度にやはり頭を撫でられてマスコット状態の月子が居た。
到着したコテージはまだ新築なのか木の香りがして、自然タップリの場所だった。
電気も水道も通っているので途中で寄ったスーパーで買った食料を冷蔵庫に詰め込むと荷物を整理して早速周囲の探検に繰り出した。
マップを片手に何をやりたいか言い合い、順番を決める。
一日目は移動時間もあるため近くのアーチェリー場で体験を数時間やるだけに留まった。
「月子、準備出来たか?」
「あ、はい。えと、これで良いですか?」
「ん、大丈夫そうだな。んじゃ、弓貰いに行くぞ」
「はい」
アーチェリー場に着いて、月子は自分だけ初心者であることに気付くと見学していると告げたが、知らぬ間に道具を準備されており傍には晴久が当たり前のようについていた。
戸惑いながらも説明されるままに防具を着けていると声を掛けられ、弓と矢の入ったホルダーは月子の分も晴久が手に持ち手を引いて隅の方へと連れて行かれた。
通常ならばスタッフが指導もするらしいのだが、晴久が断ったのか笑顔で見送られてしまい月子は余計に戸惑う。
「あの、晴久先輩も市先輩たちとゲームとか……」
「ん、後でな。月子が出来るようになったら一緒に行けば良いだろ」
「うっ……で、でも」
「日本の弓よりは引きやすいはずだぜ?」
「そう、なんですか?」
「ああ」
テンションを確かめた時、それでも月子は必死に引いていたが晴久はすんなりと引いて慣れた様子で合う弓を選んでいたはずで……。
月子は的の前に着いて渡された弓がスタッフの選んでくれた弓と違うことに気付き晴久を見る。
「ん?」
「この弓……」
「ああ、スタッフが出してたのが本来選ぶやつなんだけどな。長時間遊ぶには、ちょっと重かったから変えてもらったんだ」
「あ、りがとう、ございます」