第1章 砂漠の月00~70
41
「俺ぁ、海だな」
「えー、山が良い」
月子が市の家に向かうと市が誰かと言い合う声に首を傾げる。
屋敷の庭に目を向ければ、ぱちりと元就と目が合い
無言で手招きされて顔を出すとよしよしと頭を撫でられる。
犬ですか、私。
そこに着いて気付いた。市さんのが縁側を上がった部屋に座って
元親先輩と珍しく言い合い?
「今年の休みは山か海かと」
「意見が分かれてるんですね」
「山が良い、なんで?この前海行ったじゃない」
「分かってねえな市、男の浪漫は海だろう?」
「市女だもん」
元就先輩のうんざりとした顔が怖い。
落ち着いて下さいと宥めて居たら、違う手が頭に乗って
「元就に月子?何してんだ?」
「アレを見よ」
ん?と騒がしい声を見ると。ああ、山か海かってか
「おい、市、長曾我部」
「お、月子」
「月子ちゃん」
「こんにちは」
ねえ、と小さく言葉を発してからガシッと肩を掴まれて
「海と山どっちがいい?」
「え、ええとー」
「市、元親、程々にな」
「先日海でしたし、今回は山ですかね。次の機会に」
「はい山!!」
「山か~…」
月子の一言で決まってしまい、思わずおろおろしていると
晴久に「気にすんな」と頭を撫でられて、その柔らかい笑顔が
この前まで沈んだ晴久ではない事に気付いて
「山なら色んなアウトドア体験できる施設とコテージがあるんだけど」
「お、いいなそれ」
山に決まったようだけど、行先の宿泊はコテージを借りる。
アーチェリーやパークゴルフに限らず色んなアウトドアで遊べるらしい
「市は山菜採りたい」
「其方はブレぬな」
「うふふ」
市先輩の山菜料理楽しみだな
「月子」
「はい、元就先輩」
「アレは親に見せたか?」
「はい」
元就先輩に言われて、鞄に入れた書類を渡し。暫く皆さんに内緒にしなきゃと
晴久先輩の問いにも首を横に振った。