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砂漠の月

第1章 砂漠の月00~70


昼休憩に入り、部活のメンバーから離れてやってきた元就と吉継に市と月子が労いの言葉を掛けてお弁当を食べられる場所へ移動する。
ホールよりは、と休憩室として開かれている会議室に入ると僅かに視線が向けられたが全員が無視して椅子を運びテーブルを一つ占拠した。

「ほぅ……これは」
「随分頑張ったなぁ……」
「月子ちゃんも手伝ってくれたから、捗ったよ?」
「作るの楽しかったです」

広げられた重箱には両手でも足りないほどの種類のおかずが彩りよく詰められ、一口サイズの色とりどりのふりかけ入りおむすびがラップで包まれて並んでいる。
その豪華さに傍を通ったり中身が見えた他校の選手達が何度も見直していたが、六人はやはり気にせず手を合わせて食べ始める。

「うん、美味い」
「フヒヒ、美味よ」

無言で食べ進めるのは元就と三成で、感想を一言でも言うのは晴久と吉継だ。
美味しそうに食べてくれる男性陣に作った市と月子も満足気に箸を進める。
月子がもぐもぐとハンバーグを口にしていると、不意に口の端を指で撫でられて振り返る。
視線の先には指についたケチャップを舐める晴久がいて、何が起こったのかわからずきょとんとしていると向かいから元就の馬鹿めという声が聞こえてきた。

「ん?」

どうした? と不思議そうな晴久に、その行動の一部始終を予想してしまった月子はなんでもないと慌てて首を振ってから食事に意識を戻す。
無意識ですか?! と叫びたいが声が出ず、もう味も分からない月子はそのまませっせとご飯を口に運んだ。
周囲で見ていた四人は大体呆れ顔だが、諸悪の根源が無自覚なので誰も指摘しなかった。
昼休憩が終わり、個人戦も元就の圧勝で終わり、合気道部はこの夏の試合はこれで終わりだということだった。
帰りにどこかへ寄るかという話も出たが、三成と吉継に呼び出しが入ったため四人はいつも通りに帰路へついた。

夏休みは週末に限らず度々月子が市の所へと泊まりに来ており、今日も泊まるのだと夜更しに何しようかとキャッキャとはしゃぐ女性陣を眺めながら元就と晴久は黙って歩く。
市と月子の会話は今後の夏休みの遊びに行く場所の話に移行したようで、前から呼ぶ声がする。
元就と晴久は目を合わせると苦笑しながら前に駆け寄り、会話に混じった。
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