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砂漠の月

第1章 砂漠の月00~70


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月子が風邪で一日休んでから少しして、学校は夏休みに入った。
市と月子が所属する同好会は夏休みの活動はないが、運動部は今からが本番で夏休みの間に幾つかの試合がある。
元就と晴久はそれぞれの所属する部活の練習や試合で午前中は学校へ行くため、市と月子も涼しい図書室で課題をやるという名目で一緒に学校へ行ったり家でお菓子の新しいレシピを作ってみたりと充実した走り出しをしていた。
そして今日は元就の所属する合気道部が試合をするというので、丁度部活が休みだった晴久と市、月子が吉継の応援に行く三成と共にお弁当持参で応援に来ていた。

「月子ちゃん、大丈夫?」
「あ、はい。前よりは覚悟してきたので」
「覚悟?」
「前に俺の試合を見に来たら歓声や野次が激しくて驚いたんだと」
「ああ」

六人分で重箱になったお弁当は市と月子が作り、晴久と三成が分担して持っている。
四人で並びながら会場に入ると途端に注目を浴びるのだが、すっかりと慣らされた月子を始め誰も気に留めない。
元就と吉継を探してきょろきょろする市と月子に、先に吉継を見つけた三成が声を掛けてそちらへ移動する。

「元就、吉継」
「来たのか」
「うん。お弁当とデザートも持ってきたよ」
「早う終わらせるゆえ、その辺の観客席で待っておれ」
「頑張ってください!」

市が声を掛けると二人が近づいてくる。
六人で固まって少しばかり会話をすると直ぐに試合開始時間が来てしまった。
月子が握りこぶしを作ってガッツポーズで応援すれば、吉継は笑い出し元就は鼻で笑って背を向けてしまったが月子には口角が上がり機嫌が良さそうに見えたので満足だった。
観客席に移動すると月子と市を挟むように三成と晴久が席を取り座って試合を眺める。
合気道は勝ち抜き戦のようで、先に相手側の選手を全員倒した方が勝ちとなるようだった。

「わぁ……合気道って凄いですね。相手の力を利用して最小限の力で倒すんですよね?」

新しいおもちゃを見つけた子供のように目を輝かせ、試合を見ている月子に武道を見慣れた三人は目元や口元を和ませる。
試合の結果は、言わずもがな。元就と吉継がほぼ全勝して婆娑羅学園の圧勝だった。
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