第1章 砂漠の月00~70
03
「尼子先輩! 部活動お疲れ様です! コレ、良かったら使ってください!」
「あ? お前……」
「月子です! 未開封のスポーツドリンクと、新品のタオルなら使えますよね?」
部活が終わった時、聞き覚えのある声に気付き振り向くと
朝挨拶してきた女、確か後輩だよな。月子という名だと言いドリンクと新品だと言うタオルを渡された。
いや、有難いけど。この月子って生徒は何で俺に構うんだろうか?
「風邪、引かないでくださいね! では、また明日! 朝のご挨拶させて頂きますね!」
「あ、おい」
嵐の様にやって来て嵐の様に去られて
ぽつんと、残るは俺1人
「おい、大谷、何笑ってやがる」
「ヒヒヒヒ!月子と言うたかあれは。健気ヨ」
「?」
取り敢えず、受け取ったタオルを見つめながら。新品だって言ってたなと思い返し。
「次会った時返さねえとな」
未だに笑い転げてる大谷はいっぺん沈め。
朝になって洗ったタオルを綺麗に畳み、汚れない様風呂敷に包み
後輩なら下級生の教室に行けば分かるだろ。
「晴久、それだと朝に挨拶しに来てる月子ちゃんに会えないと思うの」
「あー、教室行くのは昼休みにすっかな」
今朝も月子は挨拶に来たのは良いけど、直ぐ逃げてってしまうので捕まらなかった。
でも、何で俺に対してああも接するのかが分からなくて机に突っ伏して
「追いかけて聞けばいいのに」
「おい市、何だその含み笑いは」
追いかける、ねえ。昼にタオル返せばいいんじゃねえかと思ったが
ううん、放課後追いかけて聞くのもアリか。人少ないし。
昼にタオルだけ返して礼言って。
部活後に追いかけて?ん?訳が分からなくなってきたぞ?
「頑張れ月子ちゃん」
「何を頑張るんだ?市」
「内緒」
「お前」
市が何か分かってる風だけど、俺の問題みたいなもんだから自分からやって行かないとな。