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砂漠の月

第1章 砂漠の月00~70


16

学校の裏庭、ばっちりとメイクを施した女子生徒三人が紫煙をくゆらせ集まっていた。

「最近あの子生意気よね……」
「前までは影が薄くって、居るのかわかんないくらいだったのに」
「なんで尼子先輩と毛利先輩があんなに構ってるの? しかも、それを織田先輩が許してる」

――許せない

そう示し合わせたように重なった声に視線を交わした三人は、そのままどうしたら良いかを話し合い始めた。
誰も気づかないその相談は、やがて実行された時にこの三人を後悔の嵐に叩き込むのだが、今はまだ誰も気づかない。


***+***


月子はその日、部活がある晴久たちを待ちながら図書室に居た。
借りた本を返して新しい本を物色している途中で、誰かとぶつかってしまったのか背後から強い衝撃を受けて本棚に倒れ込んでしまった。
幸い、手には何も持っていなかったので本棚に手を突いて身体を支えることで大けがは免れたが、避けきれなかった棚でおでこを擦りつけたらしくひりひりと痛んだ。
後ろを振り返ったが既にぶつかっただろう誰かは居らず、お互いの不注意かなと軽い考えで首を傾げながらも再び本の物色を再開した。
その後ろ姿を見つめる暗い目が一組、二組、三組と現れて消えたことには気付かなかった。

「おい、月子」
「はい、なんですか?」
「お前最近何してんだ?」
「ふぇ?」

図書室での衝突から数日が経っていた。月子は一日に数回、廊下や階段で誰かとぶつかることが増えていた。しかし、ぶつかったと思って謝ろうと振り返っても誰も居らず、徐々に不安を覚え始めているところだった。
今日は部活がないという三人に一緒に帰ろうと誘われて、月子は待ち合わせ場所になっている昇降口で合流した所だった。
手に持っていた荷物を取り上げられ、ついでにその手も救い上げられて眉を寄せた晴久に問いかけられ、何を言われているのか判らずきょとんとした表情で見つめ返した月子に晴久の目つきが鋭くなる。
怒られる……反射的に思った月子が首を竦ませると、頭に手が乗り、降ろしていた前髪を親指が攫っておでこを晒された。
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