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砂漠の月

第1章 砂漠の月00~70


反射的にそれを目で追うと、自分が縫った覚えのある布で視線を布から上に徐々に上げれば不機嫌なのか気まずいのか、色々複雑そうな表情をした美人のゴスロリ少女が居た。

「晴久先輩?」
「……おう。驚かねぇの?」
「ええっと……実は、市先輩に相談されて衣装を縫うお手伝いをしたので」
「マジか……」

月子が名前を呼ぶと、僅かに目を見開いた後やっぱり複雑そうな声で返事があった。テーブルに行くたびに驚かれたのか、いつも通りの月子を見て思わずという風に問いかけたのに当日になったので時効かなと正直に言えばがっくりと肩を落とされた。
その反応に慌てた月子を抑えたのは軍服のワンピースを翻した元就だった。

「気付いてなかったのか戯け。月子はこの学園祭準備期間中ずっと市の家に居たであろう」
「……いや、遊びに誘われて来てるだけなんだと思ってた」
「その、お泊りでお手伝いしてて……市先輩に内緒って言われたから」

ごめんなさい、と眉を下げ犬なら耳を垂らして反省してます、と言わんばかりの雰囲気で言う月子に晴久はそれ以上何も言えなくなったらしい。
元就共々月子の頭を撫でて席に着くと、丁度市が月子の頼んだメニューと賄いらしい食事を盆に乗せ持ってきた。

「休憩、ここで良いの?」
「月子も居るしちょうどいいだろ」
「構わぬ。他所に行くのも無謀という物」
「まぁ、午後も少しあるし着替えて回るのは後がいいわね」

きょとんとしている月子を前に、市と元就、晴久は昼食の休憩だと言って同席した。
思わぬサプライズに月子が嬉しそうに笑みを浮かべると、晴久が頭を撫でている。すっかりとデフォルトと化したその様子を見ながら市が声を掛ける。

「月子ちゃんは、この後どうするの?」
「えっと……もう少し他の人たちのを見て、その後は市先輩たちが終わるまで図書室に居るつもりです」
「そう、じゃあ、もう少し待ってて一緒に回らない?」
「う?」
「俺らも、この休憩の後一時間くらいで今日の当番終わんだよ」
「明日が本番ゆえ、今日は早めに切り上げて良いことになっておる」
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