第1章 砂漠の月00~70
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両親の件が一段落し、月子の生活も落ち着いた。両親は月子を腫物に触る様に扱うが、それも彼らが悪だくみを再度しないためにと織田理事長から派遣されたお手伝いさんのせいだろうと思って気にしないことにした。
何かあれば、そのお手伝いさんが相談に乗ってくれるので月子は安心している。
心が軽くなった月子はもう無理な自分を演じる必要もなくなり、日々充実した時間を過ごしている。
少しだけ決まることは、素の自分に戻ったせいで未だに晴久との会話がぎこちなくなることがあるということくらいか。
それも市と元就のフォローと晴久の元々の気質でスルーされており、月子にとっては毎日が楽しく幸せである。
「月子ちゃん、見つけた」
「市先輩! どうしたんですか?」
「うん、ちょっとね? 相談があって……」
「相談ですか?」
丁度学園祭の準備が始まり、月子のクラスは無難に展示系のモノになり個人のノルマはあるが大変なモノはなく時間が割と空いていた。
月子自身のノルマは得意分野だったおかげで言われた当日と翌日の二日ほどで終わってしまい、今はクラスメイトの手伝いや指導をしている所である。
そんな時だった、市が教室に顔を出し声を掛けてきたのは。
手招きで呼ばれて、驚きに声を上げながらも直ぐに近づいてきた月子に微笑みながら市はこそこそと用件を告げる。
相談と言われて首を傾げた月子だったが、その内容が自分の得意分野――洋裁だったことに笑顔になるとコクコクと張り切って首を縦に振って手伝うと請け負った。
その翌日から、市の家へと臨時で学園祭が終わるまで滞在することが決まり、いそいそと荷物を纏めてお手伝いさんにその報告をすると笑顔で送り出された。
お迎えは市の采配で昴が来ていて恐縮したのはいつものことである。
「市先輩、コレ、誰が着るんですか?」
「ん? あ、それは晴久ね」
「ふぇっ?!」
「ネタバレしちゃうと、私のクラスは男女逆転コスプレ喫茶、なの。男子が女装して、女子が男装するのね」
「ほぇ~……」