第2章 砂漠の月71~150
川沿いにあった大きな木の根元にいつの間にか辿り着いていた月子と晴久は、足を止めて向き合う。掛けられた言葉を直ぐに理解出来なくて、きょとんとした表情で見上げる月子を穏やかな表情で晴久が見つめていた。
首を傾げる様子にまだちょっと早そうだな、と笑う晴久は特に動揺もせずいつも通りでさらりと自分の発言を今はまだ冗談だと流してしまう。
「あの……」
「今は無理だから、ちゃんと実現出来るようになってからな」
「あ、と……うん」
ぽんっと頭を撫でられて告げられる言葉にようやく理解が追いつくと、頬を染めてはにかんだ笑みで月子は頷いた。
晴久もそれに穏やかに微笑むと手を差し出す。
「とりあえず、きっと近々引っ越すだろうからこのまま挨拶したら祝いのもん買いに行こうぜ」
「うん! 何がいいかな? 食器とかは買いたいのとかあるかもしれないし、寝具カバーとかいくつかあっても問題ない物がいいかな?」
「そうだなぁ……デパートでも行って店員に聞いてみるか」
「お鍋とかも良いらしいってどっかで聞いたよ」
手を引かれてゆっくりと歩き出しながら、楽しげにあれこれ考える。
結局デパートで気に入った食器を見つけて動きの止まった月子に、晴久がついでだからと購入して尼子家での月子専用の食器になったのはご愛嬌である。