第2章 砂漠の月71~150
曰く、変な噂が立っていることを知った元就と晴久による提案に、漸く市が動いた結果である。
少人数で和気あいあいと過ごせるのが売りの同好会が、人数が増えればクラブに格上げになり成果が求められる。
正直なところ、ただ入るだけで真面目にやらない人や言うことを聞かずに騒ぐだけの人、他にも色んな人が居て体験会という名の面接が行われるに至るには容易かった。
「後はこれで型を抜いて。あ、丸めて輪っかにするのも良いかな?」
「じゃあ、私輪っかにしてみます」
「うん」
少人数でグループを作って、思い思いの材料とトッピングでドーナツを作り持ち帰るのが本日のお題。
市と月子は二人で作っており丁度いいからとひそひそと身内話をしているのだ。
「市先輩はどうするんですか? 兄さんと一緒に買いますか?」
「そうね。お母様にも四人から渡したし、お父様にも四人から渡したいわ」
「あ、そうですね! じゃあ、また一緒に探しに行きましょう!」
仕上げの焼きに入った所で四人でまたダブルデートだと楽しげに笑う月子ににっこりと微笑んだ市が頷き、丁度良い焼き加減のドーナツをお皿へと移動させていく。
そんな二人の様子を羨望の眼差しで見つめる後輩や同級生の視線があることは、すっかりと注目されることに慣れた月子と日常茶飯事の市には気付かないことだった。
最終的に自分たちが作った焼きドーナツでお茶をして片付けを済ませて解散になるのだが、それぞれの彼氏へのお土産分を差し引いて余った市と月子作のドーナツが同好会内で争奪戦になるのは実はいつもの風景である。