第2章 砂漠の月71~150
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市の行動に学校で男女問わない黄色い悲鳴が上がってから、四人で散々相談した結果実際に見て回ろうという話になり日曜日だった母の日の当日に久しぶりにダブルデートの態になった。
「何買おうか、月子ちゃん」
「うーん……兄さんには反対されたんですけど、レンジで簡単に作れる料理用のグッズとか個人的に買いたいです」
「ああ、パスタ麺とお水入れてレンジであっためたらアルデンテになる容器とかそういうの?」
「はい」
「だからそれは……」
市と月子が前を歩き、彼氏である元就と晴久が後ろを歩いている状態で話し合う女性陣に、後ろから元就が不機嫌な声で割って入る。
晴久の方は苦笑しながらも止める気はなく、三人のやりとりを眺めている。
「晴久さんは、何が良いと思いますか?」
「俺か? うーん、俺なぁ……」
いつの間にか言い合いが市と元就の二人に変わり、晴久の横に移動してきた月子がその手を取って絡めながら尋ねる。
尋ねられた晴久はついぞ母の日などやったことがないため、しばし考え込む。チラリと月子を見て、きゅっきゅっと手握って遊ばせながら口を開く。
「月子が言ってたのでも、俺は良いと思うけどなぁ……。他は、無難なとこだと洋服でも着けれる様なちょっと小洒落た簪とか?」
「グッズ、私個人的に買っちゃおうかなぁ」
「俺と二人で買うか?」
「いいの?」
「俺も初めてだしな、母の日」
幼いころの記憶でもほとんどない晴久は、笑いながらそう言う。目の前では言い合いが終わったのかやはり手を繋いで元就と市が何にするかまた話し込んでいる。
ふと足を止めた前の二人に合せて月子と晴久が足を止めると、振り返った市が笑顔で花屋を指差した。
「カーネーション、買って帰ろう!」
「大きな花束にしたいです!」
「帰りで良いだろう」
「そうだな、生花は枯れちまうから頼んで作っといてもらう間に他の買いに行こうぜ」
「うん! 月子ちゃん、行こう!」
「はい!」
大きな花束という言葉に眉を寄せた元就が、反対はしないもののやや渋りそれをフォローするように晴久が声を掛ける。