第2章 砂漠の月71~150
なんだか釈然としない、とは思っても後でと言われればそれ以上を問うことも出来ず用意されたキットを見る。
それは旅行前にどれがいいかと聞かれたオルゴールの形状とよく似た材料で、あれ? と首を傾げてもう一度視線を向けるとにこりと微笑まれ月子は思わず破顔した。
あれは出来上がり見本で、作ってみたい物を選んでくれたのだと理解したのだ。晴久の前に並べられた材料を見れば、やはりその外見は月子が迷いに迷っていた物で更に嬉しくなる。
ウキウキとしながらスタッフの説明に沿ってオルゴールを作り始める。月子のは既にオルゴールの機械部分は完成している物でデコレーションなどをメインに楽しむ物。晴久の方はなんと機械部分も一部自分で組み立てるようになっている物だ。
「晴久さんもこういうの好き?」
「ん? どういう意味だ?」
「元親先輩ほどじゃないけど、こういうの組み立てたりとか……」
「ああ、嫌いじゃないな」
「そうなんだ。じゃあ、また今度他の体験とかもしに行ってみたいな」
「帰ってからか?」
「うん。なんかね、近所にはないけど、ちょっと出てくと色々やってるの」
一緒に行こう? と言われれば晴久に否やはなく、笑って頷けば嬉しそうな笑みが返ってくる。爽やかな甘さとでも言うのか、微笑ましい光景に本日のスタッフの方々に和まれているとは気付かない二人である。
順調に組み立てたオルゴールは体験の予定時間終了間際にどちらも完成した。
月子が作ったのは造花を使った花篭のような可愛らしい物で、晴久が作ったのはガラスケースの中に造花をあしらった綺麗な物だった。
どちらも月子の好みが反映されている物だが、晴久もそこそこ器用なので見た目もかなり綺麗に出来ていた。ねじが横にあり、完成すると二人で試しに鳴らしてみる。
月子の方は流行りのJ-POPで、女性ボーカルの曲がオルゴールの可愛らしい音で流れる。月子が無事になったことに喜んで、鳴り終ると晴久の方も慣らして欲しいと頼む。
スタッフも試していないからと何故か立ち合い、ねじを回すとオルゴールに見合った綺麗な音色が流れだす。