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砂漠の月

第2章 砂漠の月71~150


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今回の旅行は一緒に来たメンバーとはほぼ別行動。それは聞いていた月子だが市と元就とも別行動だと聞いて、思わず目を瞬かせてしまったのはご愛嬌だった。

「一緒が良かったか?」
「あ、ううん。それはどっちでも良くて、ただ、旅行先だと皆とは別でも市先輩と兄さんとは一緒の事も多かったから。市先輩と私は行ってみたい場所いくつか重なってたし」
「ああ……そういや、元就もそんなこと言ってたな」
「兄さんが?」
「ああ、俺らはどこに行くのかってわざわざ確認しにきたからな」
「そっか」

少しだけ申し訳なさそうな表情を見せて聞いてくる晴久に、月子が慌てて首を振り不思議に思った理由を言えばホッとしたような表情で一つ頷いた。
なんだか納得したような表情と呟きに首を傾げたがそれ以上特に気にすることはなく、出かけようと言われて月子は素直にその手を取った。
午前中はお昼までそれほど時間がないのもあってのんびりとウィンドウショッピングを楽しむ。気になる店があれば立ち寄って中を覗き、陳列された品物を眺めて冷やかしていく。
いくつかを手に取って一緒に回らないいつきやかすがの分もお土産を少しだけ買えば、晴久が苦笑していたりもした。
そうしてお昼は名物だという料理を食べて、連れてこられたのはオルゴールの専門店だった。

「ここは?」
「オルゴール作ってみたいって言ってただろ?」
「うん。え、ここ作れるの?」
「おう。奥に工房があって体験もやってる。予約してあるから」
「ほんとっ?!」

やった! と嬉しそうに弾んだ声で言う月子に目を細め、笑みを浮かべた晴久は奥へと進んでレジの向こうに声を掛ける。
スタッフが直ぐに出てきて体験料を支払うと工房の体験スペースへと案内された。

「本日はご予約ありがとうございます。こちらが組立キットと、えーっと……尼子様はご相談頂いていた物がご用意出来ております」
「ありがとうございます」
「相談?」
「ん……まぁ、後でな」

予約した時の店側の控えを確認しながらスタッフが告げた言葉にきょとんと首を傾げた月子が晴久を見ると、含んだ笑みを浮かべてまだ内緒だと誤魔化される。
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