第2章 砂漠の月71~150
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市と楽しく選んだ旅行先、今回も婆娑羅者多数での旅行ではあるが今までとは少しだけ違うらしいと月子は到着した宿泊先できょとんとした表情で首を傾げた。
目の前では元就、晴久と他の婆娑羅者たちが何事か話し、市はかすがにぎゅうぎゅうと抱き着かれながらも暫くすると元就、晴久と待っていた月子の所へ戻ってくる。
「今回は、皆とはほぼ別行動になるわ」
「そうなんですか?」
「行きたい場所が分かれたからな」
「邪魔がなくて良い」
「兄さん……」
近くに来た晴久に抱き寄せられて、きょとんとした表情のまま見上げれば市から説明されて更に首を傾げた。
晴久の補足になるほどと納得した月子は後に続いた元就の言い方に思わず苦笑を浮かべ、窘めるように声を掛けてしまった。
元就の方は気にも留めないのか片眉を上げただけでふいっと視線を逸らし、こちらも市を抱き寄せるとひとまず部屋に行くぞと歩き出す。
一緒に来たメンバーもそれぞれが部屋の鍵を貰って移動し始めている。
「月子、荷物整理出来たらちょっと出かけないか?」
「外に?」
「ああ」
「……良いよ」
内緒話をする様に耳元で問われて、同じように囁きで問い返せば頷かれて少し考えると頷く。
エレベーターに一緒に乗り込んだメンバーに、市が降りる階ごとに夕飯は皆で食べるから何時にどこへ集合だと声を掛けているのを聞きながら月子も晴久に促されて自分の泊まる部屋へと移動する。
目の前に広がる部屋がスイートクラスでも、そろそろ驚くことはなくなった月子である。
荷物を整理して出かけるための鞄を持つと晴久に手を差し出されて自分のそれを重ねる。指を絡めて繋ぐとどうしても頬が熱くなり、視線を僅かに逸らすと引き寄せられて恥ずかしくなるのを誤魔化すように頭を肩にすり寄せる。
一緒に部屋を出て晴久がエスコートするままに辿り着いたのはホテルから少し離れた場所にある展望台。小さなそれは地元ではよく知られているようだが、観光客はあまり知らないのか人はそれほど多くない。
「ここ……?」
「口コミで知る人ぞ知るっていう場所らしい。小さいがプラネタリウムと天体望遠鏡で星が見れるらしい。場所が決まってから調べてみたんだが、嫌だったか?」
「まさか!」