第2章 砂漠の月71~150
131
それを見てしまったのは放課後の事だった、偶然見てしまったそれに理解が付いて行けずに
思わず、その場から走って逃げた。私を呼ぶ彼の声は、私には届かなかった。
パンッと頬を叩く元就を、信じられないと言う顔で。その女生徒は先程この教室から出て行った女性を思い出す。
「まさか、織田さんが彼女だったのですか?」
「何を今更、分かっていてやっておるのでは無かったのか」
「私、彼女は居ないって聞いて…」
「阿呆、そ奴に踊らされおったな」
チッと盛大に舌打ちしながら、市の逃げた方へと視線を移し
先程告白し、尚且つ勝手に抱き付きながら、唇を奪って来た新入生であろう女生徒を睨む。
睨まれ、涙目になる女生徒は、誰が自分を焚き付けたかを白状して逃げる様に去ってった。
…ちょうど唇を重ねた所を見られては誤解であっても弁明のしようがない。
無意識にゴシゴシと唇を拭いながら、市が走り去った後を追いかける。
屋上、裏庭、昇降口、温室、市が逃げそうな所は見回った。
理事長室でも信長公の所に顔を出すも、黒羽も雹牙も居場所を知らぬと言う
「坂口め」
奴は写真部であったな。
写真部の部室を訪れ、先程帰ったと聞かされて、はっと顔を上げた。
「月子?」
「…兄さん?市先輩学校から出てったよ?」
「1人か?」
「ううん、2人だったと思う」
「!」
我に女生徒を仕掛けたのはあの阿呆か。市を孤立させて連れて行ったか。
月子に場を任せ、職員室に飛び込むと黒羽、雹牙に胸倉を掴まれどう言う事かと
「戯け、我に尋問せず市を攫った餓鬼に聞け」
「元就、後で詳しく聞かせて頂きますよ」
「坂口、写真部部長か」
「大丈夫?織田さん」
「うん…少し落ち着いた。ありがとう」
「気にしないで」
夕時の河川敷に膝を抱えて座って。偶然会った写真部の坂口くんにポツポツと零す
「毛利がそんなことするって、思ってるの?」
「…」
「市さん、もっと彼氏を信用しようか」
「…うん、ありがとう」
「俺もごめん、市さんと2人で話したいからって、謀った」
「え?」
「ううん、何でもない。毛利にみっちり叱られておくよ」
がっと、己の襟首を掴む毛利に薄く笑って。