第2章 砂漠の月71~150
正門をくぐって声を掛けられた新入生たちは、男女問わず市の絶世の美貌と月子の柔らかく穏やかな雰囲気に顔を紅くしながら掛けられた声に返事をしていく。
その横で晴久と元就も声を掛けているが、通り過ぎる視線ががっつりと市と月子に向いているのが気に入らないようで冷気が漂っている。
風紀委員なども途中や昇降口に立ち挨拶運動を行っているが、もっぱら後輩たちの口に昇るのは市と月子である。
「き、綺麗だな……」
「毛利先輩は可愛い感じだけど、あの柔らかい雰囲気が良いよな」
「私もあんな風になりたい!」
「織田先輩も毛利先輩も凄い綺麗……やっぱり彼氏とか居るのかなぁ?」
口々に、男も女もそんなことを言っては元就と晴久に睨まれて慌ててその場を去っていく。
市と月子はそんな周囲の反応が良く解らず、時折お互いに目を合せて首をかしげている。仲の良い姉妹の様な光景が、やはり羨望や好意を集めていく。
そんな様子を楽しげににやにやと笑いながら通り過ぎていくのは婆娑羅者たちで、挨拶運動は始まったばかりなのでまだまだ続くのである。
これから元就と晴久は害虫駆除が忙しくなると内心で苦々しく思いながら、その日の挨拶運動を終わらせるのだった。
ちなみに、市と月子を見る元就と晴久の柔らかい表情に、後輩の女子から密かに憧れられる自分たちには気付かない晴久と元就が居たのも通常運転の四人である。