第2章 砂漠の月71~150
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春休みも終わりの最終日であるこの日、婆裟羅学園は入学式を迎えていた。
「椅子の整列よし、ステージの準備よし、書類も良し」
「市、もう始まるゆえ位置につけ」
「はーい」
体育館で指さし確認をしていたのは市で、呼びに来たのは元就である。
二人は一度体育館を出て職員室へ向かう。市と元就、二人に巻き込まれて月子と晴久が実は今期の生徒会役員となっており、入学式の準備と進行に駆り出されていた。
「じゃあ、後はこれを……」
「兄さん、市先輩新入生が入り始めましたよ」
「はーい」
「今行く」
別室で最後の調整をしていた市と元就に月子が顔を出して声を掛けると、書類を手にしたまま体育館へと移動した。
入学式は滞りなく進み、教師の話が終わると生徒会のメンバーが壇上に立つ。
マイクの前に元就が立ち、その背後に市、晴久、月子が並ぶ。元就が話し出すと一瞬緩んだ空気が引き締まり、注目が集まる。
祝辞を述べ、明日以降の説明を滔々と語る元就に男女問わず尊敬のまなざしが集まり、その後ろに控えた市、晴久、月子にも同じ視線が向けられる。
市と月子に向けた男子生徒は一瞬、元就と晴久に睨まれてビクリと身体を跳ねさせるが気付いた時には二人とも何食わぬ顔で立っており錯覚だったのかと首を傾げる結果となった。
そうして終わった入学式、教室に戻った新入生は担任からの連絡を聞いてから解散し、生徒会室に集まった四人は明日以降の仕事などを整理しながら話し出す。
「えーっと……前期生徒会って結局私たちでやるんですね」
「そうみたいね」
「我は一度は断ったんだがな。副会長以下を好きに決めて良いと言われて引き受けた」
「それで巻き込んだのかよ」