第2章 砂漠の月71~150
未だに恥らう月子は反撃など出来るはずもなく拗ねた振りでそっぽを向いて先を歩き始めるが、手はしっかりと指を絡めて繋いだまま。
それを嬉しそうに眺める晴久の表情は月子には見えない。二人は園内を全て周り終わってから外へ出るとそのまま深大寺の境内を降りていく。
神社の様に参拝するわけではないが、通りにはちらほらと店などもあり観光客も来ている。昼少し前に軽く食べただけの二人はその通りにあったそば屋に入ってそばを食べた。
ドラマでも使われたらしいと近くの席の女性たちが楽しげに会話するのを聞いて、どんなドラマなんだろうかと二人で話すのも楽しく月子も晴久もは始終笑顔だ。
周囲からそんな二人に羨望の眼差しが向けられるが、二人は慣れたものでそれらをない物の様にスルーする。
「まだ時間あるな……適当な駅に降りてぶらつくか、俺の家来るか?」
「うーん、晴久さんとのんびりしたいから、おうち行って良い?」
「もちろん。泊まるなら家に連絡しろよ」
「あ、うん」
また元就に蹴られる、と眉間にしわを寄せる晴久にクスクスと笑いながら月子は母へ連絡を入れる。
横でその連絡を見ていた晴久は、ふっと笑みを零し丁度やってきたバスに乗り込んだ。帰路の途中で適当な駅に降り、ぶらりと見て回った後の帰り道はいつも通りに夕飯の買い出しをして晴久の家に帰るコースとなった。