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砂漠の月

第2章 砂漠の月71~150


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デート当日、晴久は身体にフィットするタイプのブラックジーンズに光の当たる角度で淡く桃色に見える光沢のある生地に、紅いストライプのシャツを羽織り、インナーはVネックの黒いTシャツを着こんでベージュのジャケットと革のボディバッグを手に月子を迎えに来ていた。
呼び鈴を押して中から出てきた月子は七分丈のジーンズにクリーム色のコットン生地のシャツワンピースを着て上から厚めの柔らかな若草色をしたカーディガンを羽織って、手には晴久が買ったバッグを持っていた。髪は珍しくひとまとめにされて緩く肩に流されており、マリンキャップを被っていた。

「おはよう、月子」
「おはようございます、晴久さん」

目の前に立っていた晴久を見て、頬を赤らめた月子に柔らかい笑みを浮かべ声を掛けた晴久が手を差し出すと、それに手を乗せながら月子が恥ずかしそうにはにかみながらも返事を返す。
会話をしながら歩きだし、最寄駅から乗りついで辿り着いたのは深大寺周辺だった。
バスを降りて向かう先は植物園で入園料を支払い中に入ると、色とりどりの花を咲かせた草木が出迎える。

「あっちの温室は薔薇園か?」
「全部ゆっくり見て回りたいな」
「おう、じゃあ、とりあえず近い所から見ていくか」

指を絡め直して手を引かれ、頬を染めながら月子も絡めた指に少しだけ返すように力を込めて引かれるまま歩き出す。
ゆっくりと回る植物園はいくつもの木々や草花があり、綺麗に咲き誇った物もあればこれから咲くために蕾を付けて準備をしている物もあった。
梅は終わりかけ、桜が咲き始める頃である。水仙やチューリップも咲き、その色や隊列で何かを描いている様な花壇もあった。
回想が終わったばかりという薔薇用の温室も見て回り、芳香な香りに包まれて目を細める。

「月子」
「はい? んっ……」
「可愛い」
「もっ、馬鹿!」

温室で人気が全くなくなった時に不意に呼ばれ、薔薇に向けていた顔を晴久の方に向ければちゅっと可愛らしいリップ音と共に唇を啄まれ月子が真っ赤になる。
甘い笑みでその様子を眺め可愛いと言う晴久に頬の赤さが増して、ペチペチと晴久にとっては痛くもない程度で腕を叩かれてクスクスと笑う。
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