第2章 砂漠の月71~150
122
市が泣きつかれ、ケーキバイキング三回と引き換えのスパルタ課題攻略は翌日から伊達家の一室で始まった。
月子は元就と市と晴久に誘われて、役に立たないのに? と疑問符を浮かべながらも一緒に参加していた。
「じゃあ、月子ちゃんと晴久は政宗をよろしくね」
「え……?」
「おう」
「え? ま、待ってください。流石に私は役には立たないと……」
準備が出来たところで突然指名された月子が戸惑うと、市だけでなく、晴久もあれ? という顔をして首を傾げる。
その様子に月子の方があれ? という顔になる。
お互いに顔を見合わせて、暫し無言で見つめ合う。
その沈黙を破ったのは元就で、月子の前に一枚のプリントを出してきた。
「其方がいつもやっているプリントぞ。解いてみよ」
「え? あ、はい」
突然のことにきょとんとした月子だが、プリントを見て過去に解いたことがある問題だと認識すると頷いて解き始める。
十分ほどで解き終わった月子の答案は市の手によって答え合わせがされた。
そうして全員の前にピラリと出されると、政宗と幸村が大声を上げて嘘だと叫ぶ。
何故ならその答案は全問正解で、さらに言うなら政宗と幸村がやらなければならない課題の一部とそっくりそのままの問題だったからだ。
この種明かしには月子も驚き、その犯人たる元就を見る。
「毛利の家に来る前から勉学を教えておっただろう。なかなか筋が良かったでな、問題の難易度を徐々に上げておったのよ。今では我らと同程度の学力はあるはずぞ」
「なんだか難しい問題が時々出るなとは思ってたけど、まさか兄さん……」
「なんだ、元就言ってなかったのか」
「言わずとも問題なかろう」
「まあな」
苦笑している晴久と市に、驚きから立ち直った月子はそれでも自分がいてはやり辛いのではと一度は遠慮したが、政宗にも縋られて晴久にも頼まれたのでそこで漸く頷き課題の手伝いを始めた。
そうして課題攻略は数日を費やして完遂された。
「お、終わった……」
「うぅ、もう暫く見たくないでござる」
「よし! じゃあ、どこのバイキングが良いか決めよっか!」
「「お、おに……」」