第2章 砂漠の月71~150
豪快な笑いを浮かべ、ごゆっくりと言って隣を離れて行く元親は後ろから来た面々に声を掛け混じっていく。
少しの間この場所に留まって景色を眺めるのだろうと月子がその背を見送っていると、背後から抱き着かれて上を見上げる。
「楽しそうだな」
「こういう絡繰り、見るの楽しいよ?」
「好きなんだな、案外」
「うん、好きなんだって私も初めて知った。面白いね」
「そっか。まぁ、楽しめたなら何よりだ。結構な高さまで上ったのが判らない様になってるのも、考えてあるんだろうなぁ」
「あ、そうだね。それもなんか凄いね」
絡繰りが昔から好きだという元親の細かい細工は興味津々だった月子だが、後ろから抱き込まれて景色を見ているとホッとしたのか少しだけ身体の力を抜く。
それほど広くないその場所は、元就と市もやっぱり引っ付いて景色を見ており、周囲の仲間たちはわいわいと騒いで絡繰りについて話していたりする。
月子が吹き上げる潮風に目を細めながら暫くそうして外を見ていると、頭のてっぺんに口付けられてビクリと跳ね上がる。
「そろそろ移動だと」
「晴久さん……悪戯、ダメ」
「皆目を逸らしてるから大丈夫だろ」
うぅっと唸り、顔を紅くする月子にクスクス笑いながら手を引いて歩き出す晴久を見て、生ぬるい視線になる仲間たちだがすぐに気を取り直して元親の案内で城を移動する。
今度こそ急な階段を昇っててっぺんに辿り着くと、そこは天守閣で先ほどよりも高みから周辺の景色を一望出来た。
観光用に整備されている天守閣には双眼鏡や土産物売り場なども出来上がっており、それぞれ分かれて見たい物を見ていく。
月子は天守閣中央に設置されたジオラマを熱心に見つめ、晴久はその隣で聞かれることに答えている。周囲にはちらほら観光客も居たが、皆自分たちのことに集中しているため傍に元城主が居るとかそんなことは気付かない。
充分に見学して、今度は観光用通路で下に降りると丁度良いタイミングで黒羽たちがバスを待機させていた。
「後は、適当に走りますから気になる場所があったら言って下さいね」
全員が乗り込むと、黒羽がそう声を掛けて走り出す。
元親の屋敷に向かいながら途中あちらこちらに見える面白そうなモノも立ち寄っていけば、まるっと一日観光で費やして満足そうな表情で全員が一日を終えた。