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砂漠の月

第2章 砂漠の月71~150


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水族館が楽しくて、待ち合わせ時間ぎりぎりに滑り込むというハプニングはあったが、元親の居城に全員で集合すると市たちは元親の案内で城の中へと入った。

「ねぇ、こんなところから入っていいの?」
「あぁ? 別に構わねぇだろ。観光として公開させてほしいって言われて許可は出してるが、所有は長曾我部がしてんだから関係者以外立ち入り禁止ってやつだぜ!」

元親が案内した場所は、観光用に開かれている正面ではなく、え、何ココ……と言いたくなるような場所の絡繰りを操作して出てきた入口だった。
当然ながら周囲には誰も居ないことは確認済みである。
月子は予想外の出来事が目の前で起こっているからか、目を瞬かせきょとんとした表情をしており晴久に手を引かれて興味深げにあちらこちらを見ながら歩いている。

「ここは今も昔も俺しか知らない隠し通路でな」
「元親、戦国の世からお城、絡繰りだらけだったもんね」
「元親先輩、この絡繰りって釘とかは?」
「使ってねぇよ」
「そうなんですか?! こんなに大きな絡繰りなのに……」

いつの間にか先頭を歩いている元親の横に来ていた月子が、しげしげと絡繰りの動力になっているだろう木製の歯車を見ている。
潮風がまともに当たるこの場所で、木製の絡繰りが今も変わりなく動く様が物珍しいらしい。晴久は苦笑いしながら月子の後ろを歩き、市は元就と手を繋いでのんびりとその後を追い、更に後ろに他のメンバーが続いている。
通路は横並びで二人が限界の幅だった。元親の後をついて行くと、気付けば天守閣近くの通路に出ていた。
それほど歩いた気はしなかった月子だが、元々高台になっている場所に建っている城で天守閣近くまで来ていれば突然開けた景色は絶景そのものだった。

「うわあっ! 晴久さん、晴久さん、凄いっ! 凄い綺麗だよっ!」
「そこで尼子の奴呼ぶのが月子だよな」
「え? えーっと……ダメでしたか?」
「いんや、仲が良いこっていいことだ」

後ろを振り返って晴久を呼んだ月子に、ククッと笑いながら隣で元親が言えば我に返った月子は頬を染めながら戸惑い気味に元親に問いかけて頭を撫でられた。
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