第2章 砂漠の月71~150
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荷物を整理したら温泉に行くことになったが、元親が提案した温泉は敷地内にある秘湯の湯。
当然ながら男女の区切りがないのでどうするかという話になった。
「襦袢かなんか着て入ればいいんじゃねぇか?」
「その手があったか!」
うーん、と悩んでいた市に元親がさらっと言った一言が採用となり、市たちはさっそく準備をして荷物の入った小さな手提げを手に元親の案内で温泉に入る為移動を始めた。
若干森の中を歩くということだったが、道は人が通れるように整備はされていたがアスファルトなどで施工されているわけではなく、かなり獣道状態で真っ先に月子がギブアップしたのは言うまでもない。
「うぅ……ごめんなさい、晴久さん」
「気にすんな」
晴久の分の荷物も抱えた月子を晴久が抱きかかえて残りの獣道を歩くと、恥ずかしいやら情けないやらで小さくなった月子が呟く。
晴久はのんびりと歩きながら、平気そうな表情で笑って言うと両手がふさがっているので額をコツリと併せて小突く。
ほの甘い雰囲気は、一番最後を歩いているため誰にも気づかれなかった。気付かれたとしても、いつものことで放置されることは間違いないが……。
ちなみに、市を抱きかかえようとした元就は全力で周囲と本人に止められて、非常に残念そうな表情をしながら手を繋いで歩くに留まっていた。
温泉に辿り着くと、さすがに脱衣室は建ててあり男女分かれて入って準備すると外に出る。
「おぉ……凄い」
「本当にすごいですね」
「お湯も綺麗だし、入るには申し分なさそうだな。水質検査はしてあるんだろう」
「市姉ちゃん、入ろう!」
男性陣は既にお湯につかっている者も居るくらいで、女性たちは固まって会話をした後掛け湯をしてお湯に入る。
そこそこ深さがあるそこは縁の岩に座れるようになっていた。
女性陣が固まって座ると、まずはいつきが政宗たちの所に呼ばれそちらに寄って行った。かすがも佐助にちょっかいを出されてそれを追いかけて離れてしまう。
残ったのは市と月子で、二人はのんびりと湯に半身を浸して温泉と景色を眺めている。
「綺麗ですね」
「そうね、森の中で空気も綺麗だし、気持ち良い」