第2章 砂漠の月71~150
思い切り引っ叩いてやろうかと思ったらベルトの様な物で手首を固定されていて上手く動けない。
男の心底馬鹿な思考に呆れながら、次第に冷静になっていく自分もオカシイと思うけど…
「…あの男とは何度も寝たんだろ?俺の方がずっと良いって事分からせようか?」
「ちょ、変なとこ触らないで!嫌ああ!」
「この、暴れるな!」
何で逃げないって思わないんだろうかこの男。嫌だと、悲鳴じみた声を上げれば頬が熱くなって。こいつ、私を殴ったのか
ドンドンドン、部屋の扉が叩かれる音が響いて。やっと助かると安心したら
音を無視して太腿のスリットから手を入れてきた。
「ドアは鍵が掛かってるし、チェーンも掛けてる。あいつが来ても邪魔はされない」
「馬鹿ね」
婆娑羅者にドアの鍵も只の鉄のチェーンも何も通用しない。
凄まじい轟音を立てて、蝶番ごと扉を蹴破った。恐ろしい形相の元就がポカンと口を開けたままのホテルの支配人を連れて
パーティーの主催者の、ドラ息子を吹っ飛ばした。
「市、無事…ではないな、貴様あああ!」
え、あ。頬が赤くなってたみたいで、口の中にほんのりと鉄の味がして
父親も何て事だと顔を真っ青にして息子を怒鳴り散らした。