第2章 砂漠の月71~150
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織田の存在を知ったと同時に目が離せなかった。
心から彼女を渇望し、これ程までに欲しいと思う女は現れず。
昔から欲しい女は直ぐに俺の女になり、手に入らない女は居なかった。
織田のプリンセスも直ぐ俺の物になるんだと信じて疑わずに、うっとおしく睨み付けて来る毛利だかって言う男から離れる様に薬の入ったドリンクを差し出せば
彼女の瞳、唇、肌、スタイル、全てが美しくてこちらが見惚れる。
ああ、彼女が欲しい
ソファに座る彼女に近付き、薬が効いて来たのか抱き止めると意識はもう落ちていて
滑らかな肌、柔らかな感触にごくりと喉が鳴った。
彼奴らが戻って来る前に、ここを離れなければ
彼女を、市とゆっくり話したい。部屋に連れて行って、ああ、直ぐにでも唇を奪いたいけど部屋に行ってからだ
眠る市をベッドに横たわらせて。じっと、舐める様に全てを見つめる
手を頬に滑らせ、首元、鎖骨、そして唇を親指でなぞってから
ゆっくり、己の唇を重ね、豊かな胸をなぞり吸い付く
柔らかく、甘いその感触に笑みが止まらない。市が起きたらどんな美しい音を聞かせてくれるんだろう。
「ん、ふぁ、な…に?」
「起きたかい?ハニー」
「! だれ?元就は…?」
市は、己の唇を奪う者を見て頭の中が混乱する
何で自分は眠っていたのだろう。
思い出せ思い出せ、意識が消える寸前の記憶を掘り起こし、改めて目の前の男を嫌悪した表情で見る。
さっきまで唇に触れ、身体を滑っていた手もこの男のものだと自覚した瞬間に吐き気が込み上げる
「あ、なた…何?」
「何って?さっき挨拶したよね?」
「い…いや、触らないで!」
元就。その名を口にした瞬間、さっきまで笑みを浮かべていた男に顔を固定されて
信じられないものを見る表情で、眉間に皺を寄せて自分を見る男に寒気が走る
「モトナリ?ああ、さっきの奴か。市、君はもう俺のものだから、その唇から聞く男の名は俺で最後だ」
「馬鹿言わないで、こんな事許す訳ないでしょ?痛い目見ないうちに市を帰して」