第2章 砂漠の月71~150
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近場の初売りを見て回った後、洋服という気軽さも手伝って、月子と晴久は人が少ない路線の電車に乗ってみていた。
人が少ないと言っても二人が乗った車両は椅子の空きがなく、扉の前に月子を庇うように晴久が立って窓の外を見ていた。
車窓を走っていく景色は車から見る景色とは違っており、月子は自分の気分も手伝ってかどれもこれもが新鮮で物珍しく興味深々で外を見つめている。
時折晴久を振り返っては、自分が見つけたモノを指さして話しかけると、晴久も同じ方向を見て指さしたモノに気付き感想を返してくれるのが嬉しい。
しかし、月子はなんとなくもやもやとしたものを感じて視線を車内へと巡らせた。
「月子? どうした?」
「あ、ううん、なんでもない」
「本当に?」
「ほ、ほんとうに……」
視線を逸らしながら言う月子に、晴久は訝しげな表情で顔を覗き込もうとするが身体ごと顔を逸らされて出来ず、先ほど周囲を見回したのを思い出し同じ様に周囲を見る。
しかし、晴久には何が月子を拗ねさせたのか判らず、首を傾げる。
一方の月子は、着物の物珍しさを除いても晴久に集まっている女性の視線が気になっていた。ヤキモチだと自覚はあるが、どうしてももやもやとしてしまう。
暫く外を眺める振りをしていたが、そうすれば視線が強まるのが気になり、結局晴久に向き合うとジャケットの裾を握ってツンっと引っ張る。
「月子?」
名前を呼ぶ晴久にどう伝えたらいいか分からず、ジャケットの裾を握ったまま口籠る。
俯く月子に気分でも悪いかと屈んだ晴久に、月子は視線を上げると耳元で小さく告げる。
「晴久さんは私のだから、他の人の視線集めるのやだ……」
「っ?! どんな視線向けられても俺はもう月子だけだから、そんな顔すんな」