第2章 砂漠の月71~150
晴久は予想外に告げられた月子からのヤキモチに、息を飲むと熱くなる頬を隠すために口元を片手で覆う。
月子はそんな晴久の仕草の理由が分からず、呆れられたのかと不安そうな表情を見せたが僅かな間で気持ちを落ち着けた晴久の囁きに頬を染めるとコクリと頷く。
周囲で二人を見ていた者達は嫉妬や羨望の他に胸焼けしたような表情をしながらも、その様子から視線を外せずに降りるまで見ていることになった。
「月子が嫉妬してくれるの初めてだな」
「うっ……だって、嫌だった?」
「そんな訳無いだろ? 逆、嬉しかった。俺だって普段からしてるんだぞ? 昨日迎えに行った時もお前、興元の膝に抱っこされてたりするし」
「えっ?!」
適当な駅で降りて駅前の商店街を見てヤキモチを焼かれているなんて思っていなかった月子は、晴久の言葉に驚いて声を上げる。
その驚き方に不本意という表情で見てくる晴久に、ごめんなさいと謝りながらも月子は嬉しくて頬を染めながら笑みを浮かべる。
晴久の市への想いを間近で見ていた数カ月、自分は絶対市には敵わないと痛感していた。
それは想いが通じた後も変わらず月子の心にしこりとして残っていたが、そんな相手が兄となった人にもヤキモチを焼いてくれるのだから頬が緩むのも仕方がない。
晴久の方は月子の気持ちが分かってしまうのか、苦笑を浮かべるだけで何も言わない。ただ、繋いだ手に緩やかに力を込めて親指でその甲を撫でる。
月子の敬語は今朝からそのぎこちなさもすっかりと取れていて、晴久の心も浮足立っている自覚はあった。
「あ、あそこ入ってみたい」
「ああ、良さそうだな。あそこで休憩したらそろそろ帰るか?」
「うん。今日は帰らないと……」
「ほんとは帰したくないけどな」