第2章 砂漠の月71~150
ビクリと肩を揺らす市を腕の中に引き寄せ、膝に抱き上げると顔を覗き込む。
ちゅっと可愛らしい瞼に唇が触れる、頬にも、鼻先にまで触れてきてくすぐったさに首を竦めた市が閉じていた目をゆっくり開いた。
「無理をするでない」
「無理、なんて……」
フルフルと首を振る市に、元就は目を眇めならばと抱き上げてベッドに運ぶとそっと降ろす。
上から覆いかぶさるように手を付いた元就が顔を覗き込むと、市の瞳が不安げに揺れる。
元就は無言で額に口付けると、頬、唇と触れ、首筋へと唇を移動させる。
項をペロリと舐められ、市はビクリと再び肩を揺らし僅かに逃げる。
元就はそこで動きを止めると身体を起こして、市の顔を覗き込む。
「怖いことを我慢する必要はない。市の気持ちは嬉しいが、焦って我に合わせる必要はないのだ」
「でも……」
「言ったはずだ。我は其方を喜ばせたいだけだと。ここはその為の場所であって、市が本当に望むなら吝かではないがそのつもりで来た訳ではない」
言い聞かせるようにゆっくりと告げられる言葉に何度も瞬きを繰り返しながら、市はその本意を理解しようと考える。
ホテルに泊まるということと、そういう行為が直結してしまっていたが元就はそのつもりはないという。
だが、それでいいのだろうか、と。
「まだ我を特別だと認めたばかりだ、焦る必要はない。我は市にも我が欲しいと思って欲しいからな」
「……ごめんなさい」
「構わぬ。無自覚でも解るようになれば、自然と気付く」