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砂漠の月

第2章 砂漠の月71~150


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食事も終わり、パレードも終わるとレストランに居た客も一組、一組と席を立っていく。
元就も市を促し立ち上がるとテーマパークの出口ではなく、その中から行けるホテルの入口へと歩きだす。

「え? 元就、出口……」
「判っておる。だが、今日はこちらだ」
「え? えぇ?」

市が不思議そうに声を掛けると、元就は素知らぬ顔で頷きながらもホテルの入口を潜ってしまう。
訳が分からない市は声を上げながらも手を引かれるままに歩き、フロントで受付を済ませる元就を呆然と見ている。そして、思い至るのはお泊りという言葉。
自分で思い浮かべておいて、一気に頬が熱くなりどうしようもなく恥ずかしくなって俯くとぽんっと頭に手が乗る。
チラリと顔を上げればどこか照れたような様子の元就が手を差し出してきた。

「行くぞ」
「う、うん……」

差し出された手に手を重ねつつも緊張し始めた市はぎこちなく頷き、促されるままに部屋へ向かう。
部屋に着いてドアを開けられ先に入る様に促されると中に一歩踏み出す。中は市が一番好きだと言っているキャラクターの世界観などをモチーフにした部屋になっており、家具にもシルエットなどが描かれており市は一目見るなり気に入って満面の笑みになる。

「凄い!」
「気に入ったか?」
「うん!」

先ほどまでの緊張はどこへ行ったのか、元気に頷いた市は先になって部屋の中を探検し始める。
元就はその様子に満足気な表情を見せると、ソファーへ移動して市の様子を眺める。
一通り見終わった頃には興奮に頬を染め、元就の所に駆け寄った市が隣に座り込んであれこれ見てきたものを報告する。
元就は静かにそれを聞いていたが、市の言葉が止まった所で左手を持ち上げると指環に口付ける。

「も、元就っ?!」
「どうした?」
「てっ、手にっ!」
「そうだな。嫌か?」
「そ、そんなこと……ない、けど……」

指から甲、返して手のひらにも口付けた元就がちらりと市を見ると、頬を紅く染め恥じらいに目を伏せている。
市、そう呼べば恥じらいながらも視線を上げた。絡んだ視線は不安そうに揺れながらも、何かを決意した色が浮かぶ。

「す、るの?」
「して欲しいのか?」
「……元就がしたいなら、市は……」

きゅっと目を閉じて僅かに震えている市に、元就がふっと息を吐く。
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