第2章 砂漠の月71~150
「……元就?」
「なんだ?」
「月、見ないの?」
「月を見ている其方を見ておるな」
「……月、見ようよ」
市にだけ見せる柔らかな表情で、ただ真っ直ぐに市を見つめる元就に未だ幼い恋心は翻弄されるばかりで、真っ赤になって恥ずかしげに瞼を伏せた市は肩に擦り寄る。
元就の指が、顎の下を擽り、嫌でも顔を上げさせられれば羞恥に潤んだ瞳で元就を睨む。頬を赤らめ、僅かに震える市の頬に口付け、瞼にも口付けた元就は触れるだけの口付けを唇にも施して離す。
市はぐりぐりと肩に頭を押しつけ、ばかっ、と小さな声を漏らすと市に回されている手とは逆の放り出された手を取りきゅっと握る。
暫くして羞恥が落ち着くと、また月に視線を向けてしばし二人で月見を楽しんだ。