第2章 砂漠の月71~150
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元就と市がゆったりと紅葉を堪能しながら歩いていると元就のスマフォが鳴り、LINEに晴久から浅倉に会いそちらに向かったというメッセージが届いた。
僅かに眉を寄せたが、浅倉ならば問題はないだろうと返事は返さず画面を閉じると程なく少し離れた所から名前を呼びながら駆けてくる人物が現れた。
「市ちゃん! 元就君!」
「あら、浅倉さん。お仕事?」
「喧しいわ」
「いたっ! 元就君、痛いっ! 騒いでごめんなさい! お願いだから話してっ!」
二人の目の前に辿り着いた浅倉の元気の良さに、元就はアイアンクローを噛まし、市はのんびりと微笑みながら迎えて声を掛けた。
その後暫くわいわいと賑やかに会話を交わしたあと、漸く浅倉の頭から元就の手が外され落ち着いて会話するに至った。
「元就君の愛が痛い……」
「其方はもう一度やられたいか」
「すみません! 嘘です! 止めてくださいっ!!」
元就と浅倉の会話にクスクスと笑いながら、市が今日はどうしたのかと問えば趣味で撮りに来たのだと言いカメラを見せる浅倉に市がカメラのモニターを覗き込む。
綺麗に写された紅葉のある景色があり、流石だと褒めたあともう一つのカメラを出して晴久と月子の写真も見せた。
「あら、晴久たちにも会ったの、ね」
「うん、別行動だって言うから探しに来たんだ。君たちもお付き合い始めたんだね」
「う、うん……」
のほほんと言う浅倉に頬を染め、こくりと頷いた市とその彼女を引き寄せる元就に浅倉は微笑ましげに眺め、カメラを掲げると撮らせてと言う。
元就と市は顔を見合わせたあと使わないならという条件で頷く。やっぱりと苦笑しながらも、嫌なら使わないと頷き浅倉がカメラを構えると市と元就は寄り添って自然に会話を交わす。
改めて顔を向けた証明写真ではなく、自然体な二人に笑顔で浅倉がシャッターを切った。