第2章 砂漠の月71~150
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珊瑚色の地色にクリーム色の縞模様と所々に吉祥文様の入った着物に
黒の地色に花札模様が入った帯を締めて、それに合う小物を身に着けた美少女。
傍らには今様色の無地の着物にやはり少し濃い色目の格子模様の変形のような柄の
羽織を着た美せい…ね…ん…?
「あれえ?!晴久君?」
「あん…?浅倉ぁ?」
「久しぶりー、なになに、彼女できたの?」
紅葉を撮ってたらしい浅倉にバッタリ出会って、晴久は顔を引きつらせる。
浅倉はにこにこと笑って、今日は市ちゃん居ないの?元就君は?と
いつもの天然ぶりに晴久は軽く溜め息を吐く
しょうがねえな、と苦笑いで頭をかき。
「市と元就は別行動、浅倉サンは?あんた芸能記者とかスカウトじゃなかったか?」
「趣味で紅葉撮ってるんだ、偶に雑誌で採用されるけど、スカウトはもうやってないよー。今はモデル雑誌とか、色々食い繋いでるだけ」
「ほー」
「あ、そうだ!」
浅倉はにこにこしながら違うカメラを用意して。
「きみの名前は?」
「あ、月子、です」
「晴久君、月子ちゃんと一緒に紅葉をバックに写真どうだい?」
浅倉の提案におっ、と。まんざらでもなく嬉しそうな顔の晴久ににこりと笑って。
大衆が見ていたが、紅葉が舞う景色の中で最高の写真を撮ることができた
「ありがとな、浅倉サン」
「ありがとうございました」
「ううん、写真は出来上がったら自宅に贈るね!お幸せに」
市ちゃんと元就君を探して来る!と元気に駆けて行った記者の背中を見送ってから
はと気付いて浅倉に電話を掛けた
『はい!?どうしたの晴久君』
「おっま、その写真載せるなよ!?」
『使うとしたら市ちゃんの使うかな、許可貰ったらだけど』
ああ、こいつなら市に頼むんだろうなと電話を切って
「行くか、月子」
「はいっ」
"お幸せに"だなんて言われる日が来ようとは。月子も顔が真っ赤で
「幸せにするからな」
「晴久さん、気が早いです」
「照れるな照れるな」
真っ赤になって、両手で顔を覆ってしまった月子の手を宥めながら微笑んで
再び手を繋いで色付いた紅葉を眺めて歩いた。