第2章 砂漠の月71~150
晴久と元就はもう良いだろうとそれぞれの彼女の手を取ると指を絡める。
「あんまり放っておかれると寂しいんだけどな?」
「あ……その、ごめんなさい」
「別に責めてる訳じゃねぇよ。ただ、あんま市と二人だけで先行くなってこと」
「なあに? 晴久、ヤキモチ?」
「それもねぇわけじゃないけど、そうじゃなくて」
周囲の視線を集めている自覚がない市と月子に苦笑しながら、晴久が月子にそう言うのを横で聞いていた市が面白そうに入ってきて月子が顔を紅くする。
それを否定しない晴久に驚いた市だが、その後に続いた元就の言葉でピタリと固まる。
「我も晴久と同意見だ。其方らを見る男共の視線が鬱陶しい」
「え?」
「視線ですか?」
「やっぱり自覚なしか」
気配などを悟るような訓練を受けていない月子はもちろんだが、自分の容姿に無自覚な市も悪意のない視線には無頓着だ。男二人は呆れながらも自分と指を絡めて頬を染める彼女たちに溜飲を下げると、周囲の男たちに視線を巡らせて牽制すると再び歩き出す。
ゆっくりとした歩調で紅葉狩りを楽しみながら、ツツジ茶屋と呼ばれる四阿で昼ごはんにしようと晴久と元就が分けて持っていたお重を広げる。
「美味そうだな」
「ふふ、市先輩が頑張ったんですよ」
「月子ちゃんも半分、作ってくれたのよ?」
「へぇ……」
既に箸を手に市が作った物を口にしている元就と、見た感想をまず述べてから月子に選り分けて貰っている晴久。
二人は羨望やら嫉妬やらの視線を無視しながら、美味しい料理に舌鼓を打つ。
食べ終わると暫く別々に行動しようという事になり、お重を片付けて分担して持つと晴久は月子と、元就は市と手を繋ぎ時間を決めて吹上茶屋で待ち合わせとなった。