第1章 砂漠の月00~70
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週末のお泊り会にて、何故か赤飯が出された。
何が起きたんだと目をぱちくりと、目を瞬かせていると市からの爆弾にテーブルに向かって額を打ち付けた。
まさか、俺と月子がくっ付いたら出すとか、そんな事思われていたのかよ。
「ほー、じゃあ元就と市がくっ付いた時は何かしたのか?」
「うっかり母が赤飯作ろうとしておったわ」
「全力で止めて頂きました」
そりゃそうだ、と妙に納得されて苦笑い。
「経久殿が喜びのあまり熱いメールを寄越してきたわ」
「祖父さん何やってんだ」
テーブルの下で、月子と手を繋いだままに
晴久は何でもないかのように振る舞うものだから、真っ赤になった月子が
繋いだ手を凝視している
市も微笑まし気に見てたが、食後の談話で元就が指を絡めて来たので真っ赤になって元就を見た。
「元就のばか…」
「いくらでも言うがいい」
市が元就の手を振り払おうとぶんぶん手を振るが元就によって繋がれた手はびくともしない
月子はその様子を見て思わずくすくすと笑ってしまった。
ふと、何か思いついた晴久は、笑う月子の頭を撫でながらお願いをしてみた
「なぁ、ちょっと先輩付けるの止めてみねぇ?」
「え? で、でも晴久先輩は晴久先輩で……」
「今はそうだが、その内変わるだろ?」
「うぅ…は、晴久……様?」
「…いや、それでも良いけど流石に今はなぁ……」
「…は、るひさ、くん……」
良し。その笑顔はとても嬉しそうで、幸せそうで。
ガンッと音が響いたと思ったら、元就が凄い嫌そうな顔で晴久の脚を蹴っていた。
「元就…手前ぇ」
「何となく腹が立ったのでな」
「理由になってねえー!」
喧嘩してる元就と晴久は放っておこうね、と月子は市の手に引かれて黒羽達の居る居間に移動した。
「良かったですね、月子さん」
「あ、先生にはご迷惑をお掛けしました」
「自分の仕事をした迄だ、気にするな」
先生達にわしわしと頭を撫でられて、なにか気恥ずかしく感じ
市の背中にぴたりと抱き付いで顔を赤らめた。
やっと、静かな、日常が戻って来たんだと、安堵からか幸せそうに笑った。
まだまだ乗り越えなきゃいけない課題はあるが、それは、それ。