第1章 砂漠の月00~70
66
目を覚ますと翌朝になっていた月子は、自室のベッドの上で呆然としたまま座り込んでいた。
周囲を見渡しても特に変わった物はなく月子は目を擦る。多少重たく感じるが、そこまで酷く腫れている気配はなかった。
「……昨日のは、夢?」
月子は首を傾げながらゆっくりとベッドから起き上がった。昨日、また知らない番号からメールが届き、晴久が彼女と共に居ると知らされてパニックになった記憶まではある。
その後、家に居た父に迷惑をかけ、学校から遅れて戻ってきた元就と市にも宥められてと記憶を辿り、ぷつりとそこで途切れていることに気付く。
「私、寝ちゃった……?」
首を傾げるが、寝てしまったなら着替えなどは母がやってくれたのだろうかと思い当り、目も腫れるほど泣いた気がするのにそれほどではないのだからかなりの手間をかけてしまったと項垂れる。
時計を見ればいつも起きる時間で、月子はひとまずご飯の準備をしようと制服に着替えて荷物を用意すると部屋を出る。
リビングに行くと母は既に起きており、月子を見ると優しい笑みでおはようと声を掛けてきた。
「おはようございます。すみません、昨日は大騒ぎした上に寝てしまったみたいで……」
「あらあら、良いのよそんなこと。心配だったんでしょう?」
「そ、れは……」
「ふふ、良いわねぇ……」
「何がですか?」
心配だったことを言い当てられて頬を赤らめた月子は、何か含みのある笑みに気付いてきょとんと首を傾げた。
母の方は月子の様子にあら? と首を傾げると昨日のことはどこまで覚えているのかと問われ、月子は更に不思議そうにしながらも市と元就にも迷惑を掛けてしまったと答えた。
「あらまぁ……まぁ、それも良いかしら?」
「お母さん?」
「ふふ、何でもないわ。それよりご飯の準備しましょうか?」
「はい。あ、私が作りますよ」
「あら、そう? じゃあ、お願いね。いつもありがとう」
朝食の準備にかかろうとする母を止め、月子は台所に立つ。一度朝寝坊した日にはとても言い表せない食事が出て、月子は頑張って食べたが元就は朝から母を叱っていた。